下川裕治のタイ発日本行き 機上にて

僕がキャセイパシフィック航空を選ぶ理由 第13回

東京からバンコクに向かうフライト。もし運賃やマイルを貯めるといった縛りがなかったら、僕はキャセイパシフィック航空を選ぶ。日系航空会社やタイ国際航空の直行便より、キャセイパシフィック航空の方が楽なのだ。

まず便数が多い。共同運航を除き、毎日就航している便は、成田と香港の間に1日6便、羽田と香港の間に1日4便。香港とバンコクの間は1日7便ある。これを組み合わせることができるのだ。希望した日に便がとれないことがまずない。予約せずに空港に行っても乗ることができるのでは……と思ってしまうほどだ。

チェックインカウンターも多く、チェックインにかかる時間も短い。いつもあっという間に終わってしまう。
欠航の心配もない。ある便が欠航になっても、次の便で吸収してしまう。そんなことが何回かあった。

成田や羽田、香港、バンコクのスワンナプーム空港。どの空港も運航スケジュールは過密だ。東京を出発するとき、離陸は遅れることが多い。香港到着も遅れるのだが、見事なほど乗り継ぐことができる。そしてバンコクには定刻に到着する。

香港の空港の最低乗り継ぎ時間は50分に設定されている。が、これまで30分、いや20分で乗り換えたことが何回もある。その時間で、人と荷物を移してしまうことができる空港はそう多くないと思う。

それでも飛行機は到着便が大幅に遅れるときはある。香港の空港で、キャセイパシフィック航空での乗り継ぎができなかったことが2回ある。空港ホテルに泊まることになるのだが、そのとき、預けた荷物のなかから、必要なものを出すことができる。それも助かる。

飛行機のサービスというものへの考え方の違いのように思う。機内サービスを充実させるより、正確な運航時間や短い乗り継ぎ時間を優先する。それがキャセイパシフィック航空というより、香港の流儀だったように思う。それをキャセイパシフィック航空は守っている。

香港は中国返還以来、大きく変わった。民主化への動きは岐路に立たされている。街から香港らしさが次々に消えつつある。

しかし、キャセイパシフィック航空とキャセイドラゴン航空、そして香港の空港だけは、頑なに香港らしさを守ろうとしている。

たしかに直行便に比べれば時間はかかる。しかし東京から日系航空会社やタイ国際航空でバンコクに着いたときより、なぜか体が楽なのだ。


旅行作家・下川裕治の往復便 ー タイ発日本行き 機上にて
しもかわ・ゆうじ 1954年(昭和29年)、長野県松本市生まれ。タイ、アジア、沖縄と旅を続ける旅行作家。ダコはじめ各国都市で制作するガイドブック『歩くシリーズ』の監修を務める。

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