前川健一の象がバンコクを歩いていたころ

舟が、タクシーからバスに Vol.011

これが大都会バンコクの中心部。まるでジャングル・クルーズである。

かつてバンコクは人も物も水上を移動していた。網の目の運河は、今ではかなり埋め立てられてしまったが、1980年代末のセンセープ運河にはまだ舟はあった。

この当時の舟はいわばタクシーで、終点のバンカピあたりまでのどこかまで運んでくれた。タクシーだから貸し切りで、だから料金は交渉して決めた。その料金はけっして安くはなかった。この舟旅がおもしろかったので、ほかのルートを探してみると、プラカノン運河にも舟のタクシーがあることがわかり、イスラム世界の旅をした。

90年代に入り、渋滞の回避ルートとして、舟を水上バスにする計画が実行された。そのごく初期の姿が、この写真だ。

舟はまだ小さく、客もそれほど多くなかった。陸上のバスよりも高かった。この水上バスに乗れば遅刻をしないで済む。座っていけるという快適さが受けて、1年後には客が多すぎて乗れない人も出てくるようになった。


前川健一の1枚の写真で振り返る ー 象がバンコクを歩いていたころ
古いポジフィルムから蘇る記憶。今はああだけど、昔はこうだった。タイの新旧を写真とともに振り返るコラム。
まえかわ・けんいち 2003年から2018年までダコ本誌にて『前川通信』を連載。特集からコラム、広告までをも辛口の批評をくれているダコ名誉顧問ライター。『タイ様式(スタイル)』(講談社文庫)など著書多数。また、旅行人HP(www.ryokojin.co.jp)にエッセイ「アジア雑語林」を連載中。

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