男と女の学際研究 ~現役学者が微笑みの国を考察!~
5人の現役研究者が「日本男とタイ女」をテーマに、いろいろな角度から考察する連載コラムです。
今回の著者:心理学 平松隆円
近代日本における家父長制の浸透は、子供を持つなら男児が必須という意識を広めました。いわば、跡取りとしての男児を生むことが、女性に要求されるようになったわけです。ですが、タイの場合は、どうなのでしょうか。
片山が、「女性の自立と男性の婿入り婚」というコラムを、第4回で書いています。それによれば、タイでは男性が女性の家に婿入りする妻方先住婚なんだとか。タイが母系社会であることを端的にあらわしていますが、だからといって女児を欲しているとも言えないのです。実は、どちらも欲しいのがタイ社会なのです。
男児が欲しい理由
男児が欲しいという理由は、まず、子供が生まれた場合、夫婦に法律上の婚姻関係があろうがなかろうが、子供の姓は父系を継承します。ですが、法律上結婚すれば、女児の姓は嫁ぎ先にかわります。家を存続させるという意味では、男児が必須です。また、仏教国であるタイでは、男児は一時期出家をし、家族のために徳を積みます。これは、女児ではできないため、男児を欲する家族は少なくありません。
女児が欲しい理由
片山も書いていますが、両親の老後の面倒をみるのは、娘とされています。ここに、妻方先住婚の特徴が垣間見えます。いくら男児に姓が継承されても、家族のために出家しても、老後の面倒をみてくれないのは、大きな問題です。その意味で、男児よりも女児が欲しいという家族も少なくないのです。
ハイブリッドとしてのレディーボーイ
話は変わりますが、なぜタイではレディーボーイが多いのか。その理由が、男児も女児も欲しいという親の影響だったとしたら、どうでしょうか。法的には男性であるため、姓の継承が可能、そのうえ本人は女性とおもっているため、将来は親の面倒をみてくれる。そんな邪推をせざるをえません。