タイ料理には「タイ・チャイニーズ(タイ中華)」と呼ばれるジャンルがあります。パッタイやガパオ、クイッティアオなど私たちが普段気軽に食べているタイ料理も実はその一つ。そんな既存のイメージを覆す新しいスタイルを体験しに行きませんか? 五感をフル活用しても足りないほどの、未知なる出会いを求めて。
築120年超、祖父の薬屋をリノベーション
バンコクを代表する観光スポットとして、日々往来が絶えない中華街「ヤワラート」。そんな活気と喧騒が入り混じる大通りから1本入り、商店がひしめく路地裏に「Restaurant Potong(以下Potong)」はあります。
タイ・チャイニーズをコンセプトに、お店を構えたのは2021年10月のこと。オープン1年足らずにも関わらず、多数の賞を獲得。多くのメディアに取り上げられる同店を牽引するのが、気鋭のシェフ・パムさんです。ニューヨークにあるミシュラン星常連のモダンフレンチ「Jean-Georges(ジャン・ジョルジュ)」で研鑽を積んできた彼女が、この路地裏を選んだ理由とは?
「このお店は、かつて家族が中国から移り住んできた時に初めて持った家で、築120年を超えています。以前は祖父がこの場所で薬屋を営んでいましたが、閉店後、何にも使われず眠っていたんです。いざ自分のお店を出そうと考えた時に、ふと浮かんだのがこの場所でした。私たちの家族の歴史と祖父の薬屋時代の思い出が残る5階建てのビル。雑多なヤワラートと歴史を重ねてきた古いビル、そして最新のファインダイニングというコントラストが面白いなと」。
お店全体のコンセプトとして掲げるのは、「新旧の同居(Juxtaposition)」と「記憶に残る体験」。中国とポルトガルの造りが融合したシノ・ポルトギース建築や祖父の薬屋時代のアイテムを生かしながら、料理だけではなくここでしかできない体験を提供したいとお店をスタートさせました。
Potongの料理に込められた5つの要素とシェフの記憶
Potongで提供されるのは、全20品のテイスティングコース(4500B)のみ。訪れた人たちをいかに満足させられるかは、シェフの手腕とアイディアにかかっていると言っても過言ではありません。パムさんがコースを考える際に最も大切にしているのが、「特別で非日常的な体験と思い出をいかに提供できるか」ということ。料理の味だけでなく、五感を通してPotongを体験してほしいと願っています。
そんな彼女が生み出す料理は、私たちがタイ・チャイニーズと聞いて連想するものとは全く異なる、初めての出会いばかり。研究熱心な彼女は独学で「発酵」について勉強し、醤油や酢、味噌などお店で使う調味料はすべて自家製という徹底ぶり。
加えて、彼女の料理に欠かせないのは塩・酸・スパイス・食感・メイラード(香ばしさ)という5つの要素。そして自身の記憶だと言います。幼少期に食べた思い出の料理や旅先で出会ったひと皿、母の味……など一品ごとに込められたメッセージが、時空を超えた非日常のひとときへと連れて行ってくれます。
他では出会えない料理を求めて、Potongの予約は数ヶ月先まで埋まることもしばしば。ミシュラン星獲得の有力候補という噂もあり、今後さらに予約が取りにくくなること必至です。混み合う前にぜひ訪問を。4・5階にはレストランとは別に設けられたバースペースがあるので、「まずお店の空気に触れてみたい」という方はバーから試してみるのも◎。
まだ齢33歳。彼女のこれからに目が離せません。
Restaurant Potong
場所:422 Vanich 1, Samphanthawong
(MRTフアランポーン駅から車で10分)
電話:082-979-3950(英語可)
時間:17:00または18:00〜の回を選択可能
WEB:www.restaurantpotong.com
LINE:@potong
Facebook:restaurant.potong
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