「小説を音楽にする」をコンセプトに、唯一無二の楽曲を提供する「YOASOBI」。代表曲『夜に駆ける』はストリーミング再生数が日本史上最多の8億回を記録。NHK紅白歌合戦の出場を果たすなど、もはや説明不要の知名度を確立したとも言える2人に、曲作りに対するアプローチ、そしてタイでの活動の可能性について尋ねた。
取材・執筆/日向みく
コンポーザーのAyaseとボーカルのikuraによる音楽ユニット。2019年10月に結成、同年12月にリリースされた1st配信シングル『夜に駆ける』の大ヒットを機に、人気アーティストの仲間入りを果たす。
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− 改めて「YOASOBI」の由来を教えていただけますか?
Ayase:僕たちはユニット活動の他に、シンガーソングライター・幾田りらと、ボカロP・Ayaseとしてのソロ活動もあります。お互いのソロ活動を「昼の姿」に例えた時、その延長線上にある「夜の姿」として遊び心満載な楽しいことをしたいね、という想いを込めて「YOASOBI」と名付けました。
− 2019年11月に配信されたデビュー曲『夜に駆ける』が空前の大ヒットを遂げました。曲作りの時からその予感はあったのでしょうか?
Ayase:魂を込めて作った楽曲なので、きっと多くの方に気に入ってもらえるだろうという自信はありました。でも正直、ここまで広く世の中に届いてくれるとは全く予想していなかったです。外出自粛による巣ごもり需要だったり、SNSやサブスクの普及だったり、いろんなタイミングがハマってくれたのかなと思いますね。
− 『夜に駆ける』はポップな曲調のなかに、原作小説のゾッとするダークな雰囲気が内包されています。なぜこの楽曲が若者を中心に多くの人の心を掴んだと思いますか?
ikura:私の勝手な解釈ではあるんですけど……みんなが未来に不安を抱えるような状況がずっと続くなかで、「明るい未来を目指そうぜ!頑張ろうぜ!」とプッシュするのではなく、同じような暗い気持ちや悲しい気持ちに寄り添うことで、曲を聴いてくださる方の心の内側に触れられたのかなと想像しています。
− ikuraさんは原作に影響され、現実でもその気持ちを引きずってしまうことがあるのでは
ikura:私は原作の物語や世界観を歌としてアウトプットする過程で、主人公の気持ちになりきるイメージを持って歌っています。レコーディング前には音源を聴きながら、原作のイメージと照らし合わせて「私が主人公ならどんな風にこの音符を歌うだろう」と考えるんです。ただ、それはあくまで表現としての歌い回しやニュアンスを意識するということで、気持ちを引きずることはないですね。
− メロディや歌詞のアイディアはどんな時に湧き出てくるのでしょう?
Ayase:僕の場合、「これをしていたらアイディアが湧く」みたいなものは特にありません。いいメロディが湧くまで、ひたすら部屋をウロウロしながら悩むことも多いですね。歌詞については原作小説にすべての答えがあるので、それを僕自身の経験やボキャブラリーと照らし合わせながら、パソコンの画面に向かってひたすら考えています。
実は僕、YOASOBIの活動を始めるまではそれほど読書をするタイプではなかったんです。ただ、昔から知らない言葉をすぐ調べる習慣はあったので、それが少なからず作詞に影響しているのかもしれません。あと人と喋るのが大好きで、いつも自分の経験を面白く伝えるためにどうアウトプットすればいいかを考えているのですが、これはYOASOBIの歌詞作りに近いんです。原作のストーリーを咀嚼した上で分解して、音楽として再構築して伝えるという表現方法なので、そういう意味ではもしかしたらお喋り好きが功を奏したのかもしれないです(笑)。
− YOASOBIは日本のみならず、世界中にファンがいます。もともと海外展開を意識していたのでしょうか?
Ayase:YouTubeやサブスクを通じて世界中の誰とでも音楽を共有できる時代なので、「国境を超えて自分たちの曲を届けられたら嬉しいな」という気持ちはありました。ただ、「世界と戦うためにこれを取り入れよう」といった具体的な戦略は特に意識せず、フラットに考えていましたね。
− 今後、タイを含め海外でライブやプロモーション活動を行う予定はありますか?
Ayase:まだ具体的な予定があるわけではないのですが、海外での活動はずっと願っていたことなので、状況が落ち着いたら現地ライブやファンの方と交流できる機会など本格的に動き出したいと思っています!
− ユニットとして・個人として、今後の目標や実現したいことをお聞かせください
ikura:YOASOBIの活動としては、国内はもちろんタイをはじめとした世界中のファンの皆さんを前にライブを行いたいです。個人としては、「大人だからできること」に挑戦したいですね。私は今21歳なのですが、コロナ禍に成人したので外でお酒を飲む機会がほとんどなくて。Ayaseさんから「高円寺ではしご酒するのはすごく楽しいよ」と教えてもらっていたし、状況が落ち着いたらビールケースに座ってお酒を飲んだりしたいです(笑)。その他、ひとり旅などやりたいことがたくさんあるので、人生を貪欲に楽しんでいきたいと思います!
Ayase:非常に個人的なことなのですが……海外の屋台などで気ままにはしご酒をしてみたいです。最近は街中で声をかけてもらう機会が増えて嬉しい反面、「以前のように気軽に外でお酒を飲むことはできないのかな」と戸惑いや責任を感じることがあったので、人の目を気にせず出歩きたいなと思っています。
<後編に続く>