The Next Step in Thailand

【The Next Step in Thailand #007】ムエタイジム代表 鈴木秀樹氏

「美しく、的確に、力強く」——。タイの国技であるムエタイは相手へのダメージだけでなく、“見た目〟も勝敗に関わる奥深い格闘技。そんなムエタイの本場でジムを立ち上げ、外国人初の二大殿堂にてチャンピオンを輩出した元ムエタイ選手の鈴木秀樹さん。現役時代の経験をもとに、自身のジムを通して鈴木さんが伝えていきたいものとは。

Mr. Suzuki Hideki

鈴木 秀樹(すずき・ひでき)
1970年生まれ、宮城県出身。16歳でムエタイを始め、17歳でプロデビュー。全日本キックボクシング・ライト級3位、ウェルター級2位となるが、本場のムエタイに挑戦するため1996年にタイ移住。現役引退後「INGRAMGYM」を開設。ジム詳細は https://ingramgym.com まで。

日本のキックボクシング選手にとって、その源流であるタイで修行するのが通例となっており、私が初めてタイを訪れたのは1990年でした。そこからタイへ通ううちに、タイの選手環境に憧れるようになったんです。日本ではチャンピオンレベルでないとキックボクシング一本で暮らしていけませんが、タイのムエタイ選手は所属ジムと契約を結ぶと衣食住までサポートしてもらえる。その場に飛び込んでみたいとタイ移住を決めました。最終的にはケガに泣かされ、リングを後にしましたが、その時に頭をよぎったのが修業時代からお世話になり、多くの強豪選手を輩出してきたジムの会長のこと。自分も次は指導者として新たな闘いに挑みたいと思ったんです。2002年に念願の「イングラムジム」をオープンしました。

ただ、当初は日本人が運営するジムということで周囲からの目は厳しく、冷ややかでした。不利な条件で試合に臨むのは日常茶飯事。外国人として戦うことの苦しさを痛感すると同時に、その状況下で選手を勝たせるための戦略を徹底的に練りました。技の美しさも重視されるムエタイの特徴をより深く知るため、スポーツ省公認のムエタイ審判資格を取得して判定の視点からムエタイを学ぶなど、指導者としての力を強化することに努めました。周囲の目が一変したのは、ジム開設から3年後。タイの二大殿堂の一つ、ルンピニスタジアムでうちの選手が強豪相手に最終ラウンドまでもつれる激闘を披露。負けはしましたが、試合終了後には会場中がスタンディングオベーションで称えてくれ、そこでようやく「認めてもらえた」と実感することができましたね。

選手育成でもフィットネスでもタイNo.1ジムへ!

タイのムエタイ界を取り巻く環境は、ここ20年で大きく変わっています。昔のタイ人にとって、ムエタイはお金を稼ぐ・生きるための術であり一攫千金のチャンスと捉えられていましたが、その暮らしぶりが急激に豊かになったことに伴い、ムエタイ選手を目指す若者は減少。仕事の選択肢が増え、わざわざ痛い思いをしてムエタイをやろうとは思わなくなってきたんでしょうね。ハングリー精神が減退すると同時に、全体のレベルが弱体化してきていると感じます。その反面、フィットネスとしてのムエタイビジネスは年々拡大。ムエタイが一般の方々に浸透するのは嬉しいことですが、指導する側が正しい知識と技術がほぼない状態でレッスンを行う状況が一部で露呈されるなど、心中穏やかでない面もあります。だからこそ、私自身の経験を活かした“正しいムエタイ〟を発信することが今こそ重要だなと。

イングラムジムは現在、経営体制を再構築するため前述した会長が運営するジムと協合し、エカマイからトンブリー地区に拠点を移しました。今後はそこを選手育成の場にし、スクンビットエリアで完全プライベート制レッスンを展開する構想を描いています。また、タイで唯一のムエタイ学部を有する国立大学と日本からのムエタイ留学を支援する学習プログラムの提携も始まる予定です。さまざまな面から名実共にタイNo.1ジムになれるよう精進していきたいと思います。

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