みなさん、「分子ガストロノミー=Molecular Gastronomy」という言葉をご存知でしょうか。
「美食学」=「ガストロノミー」に、「化学的・物理的」という意味の「分子」が合わせてできた言葉で、調理を化学的・物理的に解析した学問分野、その調理法をさします。
この「分子ガストロノミー」をテーマにした、産学官連携の新しい食の研究会「Molecular Cooking Society」がタイで始動しました。
研究会に名を連ねるのは食品メーカー・ヤマモリのタイ法人と、食品分野の研究に強いカセサート大学。
2021年4月には、カセサート大学にて記念式典が行われ、デモンストレーションなどが行われました。
ヤマモリとカセサート大学「Institute of Food Research and Product Development」のタッグで始動した「Molecular Cooking Society」は、食材に関する実験、新たな調理方法や技術の研究・発見に取り組むプロジェクト。
今回のイベントでは、タイ人、日本人、フランス人のシェフが、それぞれに食材の特性を生かした調理法を披露。
例えば、スイス・チューリッヒで大学院で学び、分子ガストロノミーの知識に長けるThanapol Srisutthikulシェフは、「Plant-based menu=植物性由来のメニュー」をテーマに実演。コレステロールを含まず、必要なアミノ酸を摂取できる「Soy Proteinで作ったラビオリ」などのメニューを披露しました。
分子ガストロノミーを身近に感じられたのが、日本人シェフによる、「卵」を使った実演です。
卵は生で食べることはもちろん、煮る、焼く、揚げるなど、さまざま調理方法が可能な食材。
卵には、「Thermo-Coagulation(熱凝固性)」と「Emulsifying Property(乳化性)」などの特性があるんだとか。
まず、「熱凝固性」。卵黄はおおよそ65度から、卵白は70度ぐらいからかたまり始める特性があるそう。日本人に馴染みの「温泉卵」は、黄身の固まる温度が白身より低いという特性を生かして作られた調理法なんですね。そう聞くと、「分子ガストロノミー」という言葉がグッと身近に感じられませんか?
次に「乳化性」。これは、本来混ざり合わないもの同士が中和した状態になること。酢と油は混ざりにくいものですが、卵を加えると乳化性によって混ざるのだとか。この仕組みを生かした製品の1つが、サラダドレッシングなんです。
このほかにも、卵白の泡立ちの良さや泡の消えにくさなどを意味する「Foaming Property(起泡性)」など、卵の特性とそれを生かした料理が紹介されました。
「Molecular Cooking Society」では、このように食材や調味料の特性を生かした調理法などを研究し、市場に商品を提案していく計画だそう。
分子ガストロノミーの研究によって誕生した製品が、これまでにない新しい食を見せてくれるーー。どんな料理に出合えるのか、楽しみですね!