タイの市場で新鮮なカニは日常風景だ
去る5月、タイ人を意味する「コン・タイ」と、死人を意味する「コン・ターイ」を取り違えて「バンコクで死者多数」と報じた日本のテレビ局が、今度は「バンコクでカニが捕獲された」と、港に水揚げされるカニの映像とともに報じた。
バンコク都内ではプー・パッポンカリー(カニのカレー炒め)を扱うシーフード・レストランも多く、「なぜ今さらこんなことがニュースになるのか」と、日本に住むタイ人の多くが首を傾げた。
日本での報道を確認するため、記者がバンコク都内にあるオートーコー市場を訪ねたところ、この日も新鮮な魚介類の中にカニが山積みになっていた。
クーデター後も仕入れに変化はなく、新しい種類のカニが獲れたという話も聞いていないという。そのほか、クロントゥーイ市場やマハチャイ市場などにも当たったが、同じようにカニに関する新しい情報を得ることはできなかった。
そこで日本で放送されたニュース映像を取り寄せ、吹き替え部分を除いたところ「プーが拘束された」との内容が確認できた。
タイ語でカニを意味する「プー」は、インラック前首相の愛称としても知られているが、これを直訳したことが今回の誤報につながったとみられる。
このニュースを伝えたテレビ局のバンコク支局を訪問したところ、受付のタイ人スタッフは「今事務所には私しかいない」と、プー・パッポンカリーを食べながら応じてくれた。日本人記者はワールドカップ日本代表の取材で忙しいらしく、「クーデターどころではない」として、先月から全員ブラジルに行ってしまったという。
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