僕の愛するアヒル
バミー・ペット・トゥン
僕は27年に渡り、一途にアヒルを支持している。イングランドのリヴァプールFCのことだ。象徴であるライヴァー・バードにちなみ、タイでは「ホン・デーン(赤い鳳凰)」の名が定着している。それが何故アヒルかというと、ライバルチームのタイ人ファンが付けたあだ名なんだ。優雅に歩く鳳凰を、ヨチヨチ歩きのアヒルとこき下ろしたわけだ。
僕がアヒルを応援し始めたのは、僕自身がサッカー少年になった頃だ。かつてのアヒル少年が、好物のアヒル料理を紹介するよ。
この店は信頼できるファームから大型の高級アヒル、チェリー種を仕入れ、しっかり洗い茹でて熱を通す。ひと晩置き、翌朝スパイスと一緒に煮込む。実はこのスパイス、香りを強めるために2時間以上も炒ったものなんだ。さらに黒コショウとパクチーの根を加え刺激も強化。アヒルを煮込んだスープは、豚骨ダシと合わせて 麺のスープを作る。
いよいよ僕のバミー・ペット・トゥンの登場だ。丁寧に作った漢方スープはひと口すすっただけで、濃厚な香りとまろやかで奥深い味わいに至福を感じた。主役であるアヒルのモモ肉は弾力と柔らかさが最大の特長だ。スパイスがよくしみて、ひと口目から贅沢な味を堪能した。鼻をくすぐる程度の意外にマイルドな刺激としっかりした味付けが、モチモチとした麺によく合う。
もうひとつ、珍しいギアオ・ペット(アヒル入りワンタン)も注文した。アヒル煮込みよりもさらにマイルドな漢方スープは喉越しが良い。ワンタンのむっちりとした食感を楽しんでいる間に平らげてしまった。
知名度に恥じない実力を持つアヒル料理の店は、僕のようなアヒル好きの心をがっちり掴んでいる。代替わりしても僕の心を離さないところなんて、まるであのアヒルチームのようだね。
ブアイ・ポーチャナー
現在は2代目店主スラチャイさんが采配を振るう。店名の「ブアイ」とは、初代である父の名だ。30年ほど前の創業当時はバンタットーン通りに店を構え、やがてバンコク最高のアヒル煮込みの店のひとつとなった。今回紹介したのはトンロー店だ。初代のレシピを忠実に受け継いでいるから、味はお墨付きだよ。トンロー店には特別メニューがあるんだ。それがギアオ・ペット(80B)。バミー・ペット・トゥン(100~120B)と一緒に頼んで、微妙な味の違いを楽しんでほしい。
DATA
時間:9時半~17時半 無休
電話:0-2392-7320