前川通信 by 前川健一
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前川通信その170 ベトナムの街散歩 2017年7月5日

前川 健一 前川 健一

 「サイゴンは、サイゴンさ。ホーチミンは人の名前だよ」と、ホーチミンで会った人たちの多くが言った。サイゴンという地名は、北のハノイ政府が勝手に決めたことで、俺たちは「サイゴン」を使い続けるといった。


サイゴンでそういうおしゃべりをしているうちに、ベトナム中部に行きそびれた。世界遺産観光よりも、世間話をしている方が私の趣味に合う。風景は写真で見ることができるが、世間話はその場にいないとできない。サイゴンには、敗れた者の恨みがこもっている。


ハノイでも、サイゴン出身の駐在員が語るハノイ批判は、皮肉たっぷりでおもしろかった。大阪人の東京批判のようなものだが、政治の話になると、ビジネスマンの怒りが爆発する。「汚職がすさまじい」と批判するのだが、それはサイゴンも同じだが、政治の街ハノイでは、サイゴンとはレベルの違う汚職ぶりらしい。


批判されたハノイだが、私は毎日20キロほど歩き続け、大好きな街になった。もちろん、政府や軍の話は別にしてのことだ。バンコクやジャカルタと比べたら、自動車の数が少なく、移動が楽だ。歩いて街巡りをしても、アジアのほかの街と比べれば、騒音と排ガスに痛めつけられる苦痛は非常に少ない。道路横断の恐怖もあまりない。


ハノイ散歩が楽しくて、行きたい場所がいくらでもあり、やはりベトナム中部に行く余裕がなくなった。

 

numaekawa

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前川 健一

まえかわ・けんいち
ダコの名誉顧問ライター。『タイ様式(スタイル)』(講談社文庫)など著書多数。近著に『異国憧憬ー戦後海外旅行外史』(JTB)。また、旅行人HP(www.ryokojin.co.jp)にエッセイ「アジア雑語林」を連載中(アジア文庫より移転)。

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